1998年1月号(第27号)
新年を迎えて
所 長 辻 英 彦
北海道拓殖銀行・山一証券・徳陽シティ銀行と、金融機関の破綻が相次ぐ中で、
一年を終わり、何か世紀末の様相が強烈に感じられる新年となりました。
皆さまにおかれましては、心穏やかでない年明けになったのではないでしょうか。
司法書士の世界においても
不動産の流動の減少・金融機関からの融資の減少・金融機関への融資案件の減少と、
決して安穏としていられる状況ではなかった一年でした。
一方、登記手数料令という、法務省令が国民不在のうちに改正されようとしております。
この登記手数料令というのは、
登記簿の閲覧・謄本・資格証明書・印鑑証明書の交付に係る
登記所の手数料を定めたものですが、
これは、平成5年1月に改正施行された
現在の手数料である謄本800円、閲覧・証明400円を
謄本1,000円、閲覧・証明500円に改正しようというものです。
これは住民票(彦根市の場合は200円)などと比較すると著しく高く、
一方で登記所の統廃合がなされ、
遠隔地から謄本を取得し、あるいは閲覧・証明を取得しようとするときには、
今まで以上の費用と時間を費やする結果となり、国民に過大な負担を強いるものであります。
現在、滋賀県内では大津の本局に堅田出張所が統合され、
日野出張所が八日市出張所に統合されて、
今や3支局6出張所という10局体制にまで減少してしまいました。
これが行財政改革の流れであると一言で済ませてしまうわけにはいかないことも事実でしょう。
登記所が近くにないから相続登記も売買登記もしないでおこうなどとなれば、
登記簿に記載されている事項というのは現実の状況を
いつまでたっても反映することはなくなるでしょう。
そして今回の登記手数料令の改正によって、
登記簿の謄本を取得することもなくなり、
あるいは登記簿を閲覧することも減少することによって、
ますます登記が国民から離れていくこともあるような可能性すら秘めているのです。
司法書士会会員で組織しています日本司法書士政治連盟では
声を大にして反対を表明しておりますが、
皆さまと共に、行動をして参りたいと考えております。
新年が昨年とはうって代わって、
寅年にふさわしい素晴らしい年になりますようお祈り申し上げます。