平成11年1月号(第31号)

 

 

登記行政変革の動き

        所 長  辻   英 彦

去る11月23日の読売新聞関東版の第1面に次のような記事が掲載されました。

「『国立大学など八五機関 独立法人化』省庁改革政府方針 造幣・印刷局も
政府は22日までに、中央省庁改革の最大の焦点である
独立行政法人(日本版エージェンシー)の対象について、
行政改革会議の最終報告に列記された国立病院・診療所など73機関をはじめ、
国立大学を含む国立学校や大蔵省の造幣・印刷局など12機関・業務も法人化する方針を固めた。
政府は、来年1月に策定する省庁改革関連法案の大綱に盛り込み、
4月の関連法案で明記する方針だが、省庁側が難色を示しているものもあり、
連休明けにも閣僚レベルの折衝で調整することにしている。」として、
法人化すべきものの中に、「登記・供託」の業務が含まれました。

登記・供託業務が行政法人化されることによる影響については、
現時点では明らかではありませんが、
基本的に登記・供託業務による収入をもってその法人を運営することになるとすると、
登記に伴う登録免許税や登記印紙(登記簿の閲覧・謄本の登記所の手数料)が
それに見合う形で値上げされることも予想されます。

また、より一層の運営費の削減のために、登記所の統廃合が推進されることも予想されます。

現在、登録免許税(売買による所有権移転登記にあっては、課税標準額の5パーセント、抵当権の設定登記にあっては、課税標準額の0.4パーセントなど)は、
政府の一般会計に収納されていますが、
これが当該行政法人の歳入になるものと考えられます。

一方、登記印紙は、登記所のコンピュータ化の原資として法務省に収納されていますが、
昨年4月に25パーセント値上げされたことに伴って
策定された予算額よりも半年で50億円の不足になっていると報告されています。

景気低迷の中、

企業・金融機関にあっても必要最小限の謄本・印鑑証明書等を取得するのみで、
値上げの効果は全くなく、逆に減少という結果を招いています。

これら双方が当該行政法人に収納されることによる運営費の過不足は
現時点ではその資料を知ることはできませんが、
多方面からの検討によって適正な方針が出されることを期待するものであります。

登記の信頼性をより一層高めることは国民の等しく求めるところでありますが、
独立行政法人化によってこのことが損なわれることのないよう
注視していきたいと考えております。