1999年7月号(第33号)

 

 

公図訂正の実際

        副所長  辻   博 史

土地の現状を示すものには、次のような図面があります。

法務局に備え付けられているものとして、
公図・地積測量図・不動産登記法第17条図面(地図)があります。

その他に、市役所にも公図が備えられています
(ただし、近年彦根市では、法務局の公図に合致させるように
公図を修正する作業を進めていますので、基本的には全く同一のものとなりますし、
市役所の公図には、「本図は彦根市税務課備付の地籍図の写しであり、
権利関係の確認には使用することができない。」との注記がされています。)

さて、それでは、不動産を買うときなどにその不動産の境界を確認する手段として
採用するべき図面はどれなのでしょうか。

まず、土地登記簿の表題部の「原因及びその日付」の欄で、
B○○番から分筆とか、B錯誤などと書いてあって、
「登記の日付」の欄に昭和39年以降の日付が記載されている場合には、
地積測量図が法務局に提出されていますので、その地番の地積測量図を確認することです。

ただし、地積測量図についても、
昭和40年から50年代前半のものと、現在のものとでは、
現地復元性においては格段の差がありますし、
地積測量図が提出されて20年以上経過した土地は、
その当時の形状を維持しているかどうかについて問題があります。

また、昭和54年3月以前の地積測量図にあっては、
立会証明書の添付が義務づけられていませんでしたので、
必ずしも隣接土地所有者同士の合意があった境界が示されているとはいえません。

次に周辺の土地の状況を判断する材料としては、公図があります。

公図は隣接土地との位置関係を表現しているものであり、
形状においても辺長においても正確さを欠くものと言わざるをえません。

しかし、公図と現況が合致しない場合で、
当事者が勝手に持ち替えたり、位置関係を変更するなどといった事情がない場合には、
公図の訂正を申し出ることができます。

この場合には、隣接土地所有者などの承諾を求めて、
その証拠として承諾書に署名・実印の押印、印鑑証明書の添付が求められています。

そこで、不動産を買う場合などには、
現在は国民間権利意識の向上によって、
これらの調査をする事例がしばしば見受けられますが、
かつては、「何番の土地を買ったので、登記をしてほしい」というだけの依頼で、
土地の形状や境界についてはなおざりにされていたケースがしばしば見受けられます。

司法書士の仕事としては、ただ単に何番の土地を所有権移転登記するだけですから、
そこまでの調査をする必要もありませんし、
事前に当事者間で確認がされているとの前提で処理をしていたのが実際です。

さて、制度というものは、国民のニーズに応える形で変化が起こります。

そこで、土地家屋調査士という制度が昭和25年に創設され、
不動産の表示に関する登記制度ができたもので、
それまでとその後とでは登記簿に記載されている内容に変化があることを
ご認識いただきたいと思います。

バブルが崩壊し、不動産の価値が下落したとはいえ、
国民の不動産に関する権利意識は、まだまだ根強いものがあります。

前に述べたような制度の変遷をご理解いただいて、
表示に関する登記制度がより現実に近づくための手続きにご協力いただきたいと思います。

なお、このことは別に、登記の前提としての境界の確認作業にあっても同じことであり、
隣の土地の境界を決めることは
自分の土地の境界を決めることに繋がるのだということでありますので、
併せてご理解を下さるようにお願いいたします。