平成14(2002)年4月号

 

司法書士法・土地家屋調査士法改正

        所 長  辻   英 彦

 
 去る3月8日に司法書士法と土地家屋調査士法の改正法案が閣議決定され、
参議院先議によって国会の場に提出されました。
 今回の改正法案は、司法改革の一環でもあるとともに、
業務独占資格者法のそれぞれの資格制度における
法人化(公認会計士においては既に監査法人がありますが、
弁理士については平成13年から特許業務法人として、
弁護士・税理士については平成14年から弁護士法人・税理士法人として、それぞれに先行)と、
司法書士業務については、簡易裁判所での代理業務という業域拡大を含む改正、
ならびに情報公開や紛議の調停など、大幅な改正案が提案されております。

 しかし、私たちの業務は、一方側だけに立って業務を行うことがなかった業務でした。
司法書士業務においては、双方の利害を調整しながら、
売買なり担保設定なりを双方が納得できるように行ってまいりました。
また、土地家屋調査士業務においては、
土地の境界の紛争性をできるだけ双方が納得できるように、
あるいは報酬を頂戴する依頼者に不都合なことでも過去に境界が画定している場合には、
このことを説明して解決に導くなど、調整弁的な仕事をしてきたと思っております。

 しかし、簡易裁判所における代理人として、法廷に立つことができるとなると、
常に一方側だけの主張を貫く結果となってしまいます。
これは業務の180度の転換であり、
長年培ってきた私ども事務所への信頼を根底から覆すおそれもあります。
このような意味から、私どもでは、
従前の調停・審判等の書面上の業務の域を大きく出てしまうような業務への進出には
躊躇しております。

 いよいよ、日本も米国なみの訴訟社会へ突入していくのでしょうか。
それは日本人の心の奥底の叫び声とは違うような気もいたします。
安心してご依頼いただけるための事務所づくりというのは、
決して大きな流れの中であっても基本理念を変えないことでもあると思います。
社会における調整弁として、
どんなことでも気軽にご相談いただける事務所づくりを今後とも続けて参る所存でございますので、
よろしくご理解賜りますよう、お願い申し上げます。