平成14(2002)年10月号

依頼人データベースの構築について

        所 長  辻   英 彦

 
 私どもの事務所では、昭和50年から、
「受付カード」によって処理した事件の整理と書類の授受確認をしてまいりました。
司法書士法や土地家屋調査士法では、
処理した事件について「事件簿」という書類を作成することを義務づけておりますが、
あくまでも見出し程度の検索能力しかなく、
本年夏から本格的にコンピュータによる依頼人データベースの構築に入りました。
従来の受付カードはあくまでも紙によるものであり、
書類の授受の確認や事件内容の確認には威力を発揮していたのではありますが、
その整理は年ごとの見出しから検索するしかありませんでした。
この場合、明らかに平成何年に事件を受託したのかが明らかでないと、
別の見出帳を検索する必要があり、探し出すのにかなりの時間が必要となっておりました。

 事務所ではこれを「管理番号データベース」と称して、
1件ごとの依頼人・登記申請人・登記権利者・登記義務者・債務者などを入力し、
コンピュータの検索機能を活用して、
名前から何年の何番の管理番号の事件であったかを直ちに検索できるようにいたしました。
ただし、過去の事件を入力するのにかなりの時間を要しますので、
まだ1年程度しか入力済みではありませんが、
過去に遡りながら、年内には最低でも5年分くらいは入力を済ませたいと考えております。
このことによって、
受付カードの検索への時間短縮や事件簿への到達時間の減少に繋げたいと考えております。
その意味では、権利書の裏表紙に管理番号を記入しているのもそのための布石であります。

 この方式は、法的に求められている処理ではありませんが、
これは私どもの事務所をご利用いただく皆さまが
より快適に過去の事件に到達するための重要なシステムと位置づけております。
このような小さなことから徐々にコンピュータの効能を充実させてこそ、
地域に求められる事務所となりうるのではないかと考えております。

 以前に比べて不動産の流動性が低下しているからこそ時間的な余裕はあるのですが、
そういう時であるからこそ、このシステムにかける思いは募るばかりであります。
仕事が終わればそれで終わり、という考えは私どもの事務所にはありません。
医師がカルテを保存しなければならないのと同じくらいの位置づけこそが
私たちに求められているのではないでしょうか。
いや、私どもから積極的にこのことを取り上げていく必要があると考えます。