相続登記にあたって

 

相続は人の死亡によってのみ開始します。
昭和22年5月3日までに死亡した人の相続登記が済んでいない場合には、
旧民法の適用がありますが、現在では殆どが現行民法によって処理されることになります。
ただし、法定相続分は死亡の時期によって定められていますので、
現行民法の規定がすべてに適用になるわけではありません。

1.遺言書の探索

   まず、被相続人の最終意思である遺言書を探して下さい。

2.相続人の確定のための戸籍収集

   遺言書に基づかず、または遺言書がない場合には、
   相続財産はいったん法定相続人の共有財産との位置づけがされます。
   そこで、法務局に相続登記を申請する際に法定相続人が誰であるかを
   疎明する必要があります。
   そのために、被相続人の出生当時に編成された戸籍(ほとんどの場合は除籍となります)から
   死亡事項の記載されている現在の戸籍までのすべてと、
   被相続人の住民票除票(または除かれた戸籍附票)と
   法定相続人の戸籍・住民票・印鑑証明書が必要となります。
   それらの取得については、当事務所でご指導いたしますが、
   遠隔地の戸籍や転籍・離婚等を重ねた複雑な場合には
   当事務所で取得することもできます(この場合には取得経費を頂戴いたします)。

3.法定相続人の確定

   戸籍が全部収集できれば、その戸籍をもとに、
   法定相続人を確定する作業に入ります。
   相続人となる人は民法第886条以下に列挙されていますが、
   次の順序で相続人となります。

   配偶者:配偶者は常に他の順位の相続人と共に相続人になります。
        ただし内縁関係等、正式な婚姻届が提出されていない者には相続権はありません。

   配偶者とともに相続人となるのは
   まず、@ 子(養子縁組のされている者、認知をした婚姻外の子を含む)で、
   子が被相続人よりも先に死亡している時に孫がある場合にはその孫、
   A 子(または孫)が全くいないときには直系尊属(父母、養親を含む)で、
   B 親が既に死亡しているときは兄弟姉妹の順となります。

4.遺産の確定

   相続人が確定した後には、遺産の確定をしなければなりません。

   遺産には次のようなものが含まれます。

   @ 土地・建物などの不動産(不動産の所在する市区町村役場税務課で
      不動産証明書を取得して下さい)

   A 現金・預貯金・借入金(預貯金については金融機関で残高証明書を取得して下さい)

   B 株式・出資・投資(証券会社に問い合わせて下さい)

   C 古美術品などの骨董類

   D 売掛金等の債権・買掛金等の債務

   E 一部の保険金等

   F 死亡退職金

   相続税が課税されるかどうかは、当事務所では即断できませんので、
   税務署にお尋ねになるか、税理士にご相談下さい。
   当事務所の顧問税理士をご紹介することにより、
   適切・迅速に、そしてまた節税できる分割方法を一緒に考えることができます。

5.遺産の分割

   相続人が確定し、遺産が確定したら、
   その遺産を誰がどのように相続をするのかを協議しなければなりません。
   その協議の結果を書面にしたものが、「遺産分割協議書」です。
   遺産分割の協議については、遺産のすべてについて一時に行う必要はありませんが、
   相続税の申告との関係から言えば一時に行うほうがよいでしょう。
   この書面には、誰が被相続人の法定相続人であり、
   それらの者が遺産をどのように相続するかを記載し、
   これによって相続 登記や通帳・株券等の名義変更を行うわけですから、
   各相続人が署名をし、 実印を押印して、これに印鑑証明書を添付する必要があります。
   従って、法定相続人については、全員の印鑑証明書が必要となりますから、
   実印の登録をしていない人は新規に登録をしなければなりません。

6.登記の手続き

   戸籍関係・遺産分割協議書が揃えば
   相続登記の手続に入る(当事務所への登記委任状を頂戴いたします)わけですが、
   建物については往々にして登記(あるいは増築・取毀の登記)がされていないことがあります。
   この場合には、登記のされていない建物について、
   同時に登記簿に登載する手続をした方が、将来のためには良いといえるでしょう。
   この場合には、前述の遺産分割協議書作成までに現地の調査・測量が必要となりますが、
   相続による所有権移転登記の他に、
   建物の表示登記及び
   所有権保存登記(増築等の場合には変更登記、
   取毀の場合には滅失登記)をしなければなりません。
   これらの登記には、建築確認通知書・工事人の
   引渡証明書(印鑑証明書の添付が必要です)など、
   時間がたつことによって紛失あるいは取得の困難になる書類が出てくることがありますので、
   早めにされる方がよいといえるでしょう(登記簿は所有者からの登記申請がない限り、
   名義や建物の状況がいつまでもそのままとなっています)。

7.登記に必要な経費

   登記には、次のような経費が必要となります。

   @ 登録免許税(課税標準の0.4パーセント)

   A 報酬額(課税標準額・筆数によって異なりますし、登記手続きの数によっても異なります。
      何代にもわたって相続登記がされていないと、
      場合によっては5件6件の登記となることもあります。)

   B 戸籍等の取得の費用(当事務所で不足分を取得する場合)

   C その他に、建物の登記簿の記載を現況に合致させる場合には、
      これらの登記の費用が加算されます。

   従って、評価額が明らかでない場合や、
   相続すべき財産の数、どのように(誰に)相続するか(建物の変更登記等をするかしないか)
   によって、これらの経費が大きく変動いたしますので、
   ある程度の段階にならないと、必要となる経費を計算することはできません
ので、
    ご了承下さい。

 

なお、当事務所では、預貯金等の相続に関する解約のお手伝いなどもさせていただいております。

ただし、預貯金の払戻を受けるご本人に同道いたしますので、
事務所繁忙の際には幾分の時間を頂戴するとともに、
ご本人との時間の調整を必要としますので、
あらかじめご了承下さい。

 

written by Hidehiko TSUJI
& Hiroshi TSUJI
in 1996
& corrected in 2013